土方洋(ヒジカタヒロシ)ニックネームのターナーです。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
スーツから見るウールと化繊とは

様々な素材が溢れる現代においてスーツと呼ばれる服装に使う生地も多様化が進んでいます。
今に始まったことではないですが、モノが行き届いた成熟した社会では新しい文化も日々生まれています。
文化が生まれると当然服飾も変化していきます。
文化と服飾は切っても切れない関係性にありますからね。
スーツを取り巻く環境も変化してきています。
現代のスーツと呼ばれる服装が生み出されてすでに約150年以上経ちます。
その間に沢山の変化を受け入れて今があります。
という歴史ウンタラを語るわけではございません。
スーツに化繊はどうなんだってお話です。
化繊はアリかナシか?
ボクの回答としては・・・
人によりけり
です。
まず化繊のスーツの存在を認めているということです。
正統派の仕立屋たるものそんなことを言うのか!という方もいらっしゃるでしょう。
ボクは過去の歴史がそうであるように時代が変化している以上服装も変化していくことは自然な成り行きと捉えています。
過去のどこかの時代の文化を切り抜き大事にしたい気持ちは分かりますが、世の中がそうであるならばそれを受け入れて進化させていくことを選びます。
ダーウィンのウンタラカンタラというやつです。
ちなみに服装のことであって、言動や所作という振る舞いはきちんと正すべきというのは当たり前です。
ぞんざいで横暴な態度は服装とは無関係ですから。
その上で言えば、化繊もありというスタンスです。
もちろん万人向けではないです。
ウールに変わって化繊が主役になることも未来永劫ないです。
そもそもがまったく異なる繊維だからです。
これを同質にみることは出来ません。
ウールと化繊
ダウンと中綿
これと同じで、天然の存在はテクニカルな人工物では同じものは創造出来ないし再現も出来ないのです。
だから似ているけど同じではないです。
どんどん進化していけば同じところ(例えば暖かさとか)を目指すでしょうけど、ベクトルが違うので絶対に交わらないのです。
PCやスマホの脳みそであるCPUで例えるならばアーキテクチャのX86とARMは別物なわけです。(もっと訳が分からないよね)
インテルとAMDがX86を進化させてARMに近しい電力消費を実現しようとするとその良さである演算能力が落ちちゃうし、逆にARMが能力を上げていくと処理が追い付かずに発熱してしまうという、お互いの良さが消えてしまう的な感じです。
クルマで言えば、内燃機関とEVみたいなもので、人やモノを運び、ドライビングプレジャーを得るという目的は同じでも、違うという感じでしょうか。
じゃあハイブリッドがあるじゃないかという答えにもなりますよね。
話がだいぶ逸れちゃいますが、ウールと化繊の混紡というのは古くから存在していまして、その良し悪しは賛否あるとことです。
現在の立ち位置はウールの廉価的な存在でしかありませんので、プリウスのような存在ではないです。
マジに話が逸れちゃうので本当に戻しますね。
ウールと化繊は用途を変えれば共存できるでしょう。
例えるならば、世界のリーダーが揃う場面で化繊のスーツはあり得ないです。
国の代表としての立場をオフィシャルな場面で魅せるというのはそれだけ重要であり、スーツの歴史的な成り立ちから言えば正統な装いが求められるわけで、化繊では再現出来ない繊細なフォルムはウールないし天然素材が必要になるはずです。
身だしなみとはそういうことです。
逆にそうではない着こなし文化は確かに存在します。
ウールでしかも一部の隙もない仕様を求められていない環境では化繊で仕上げたスーツのほうが魅力的になるでしょう。
自由な発想を表現する場面では緩いほうがいいではないですか。
それが装いということです。
品質的にどうなのかというと、どっちもどっちなのです。
ウールには自己回復能力がありますが、化繊にはありません。
だからお手入れや使い方次第ですが、ウールのほうが長持ちするわけで、化繊は使い切り的なポジションになるのです。
なのでコスト的にはウールが高くなりますし、ウール以上のコストの化繊は存在しないのです。
というよりもウール以上の価格の化繊を使いたかがるテーラーはいないでしょう。
意味がない。
もう少し仕立てる部分で言うと、精密に仕上げることが出来るのはウールのみで化繊では実現できないです。
縫っているそばからズレてしまう、クセ取りなどのアイロンワークは化繊では不可能だからです。
体の曲面にフィットするようなラインはウールでなければ作ることは出来ません。
化繊は簡単な補正までが限界です。
逆に言えば、そんな正確なラインを追及しないデザインであるならば化繊のほうが違和感なく仕上がるということでもあります。
ということで、どこまで行ってもこのウールと化繊は交わることはないのです。
交わろうとすればするほど無理が生じていしまいます。
それよりも用途をわけてお互いの良いところを伸ばすような方向としてなら共存は可能と考えています。
まとめ
長々と書いてしまいましたが、ウールと化繊は似て異なる繊維です。
お互いに良さはありますから、それを伸ばす方向で活用ようするようにしてみるのがいいでしょう。
好みはあるでしょうし、立場や立ち位置で用途は変わります。
どちらが一方のみを認めて、他方を認めないという時代ではもはやないです。
多様性の世の中です。
みなさんにとって何が最良なのか。
なかなか分からないかもしれません。
そんな時はボクに相談してくださいね。
ベストな答えを見つけていきましょうね!
土方 洋
最新記事 by 土方 洋 (全て見る)
- スーツにおけるウールと化繊は共存出来るか? - 2025年12月23日
- 気候が読めない時代だからこそ服装でコントロールしよう - 2025年12月22日
- 年末年始のお知らせ - 2025年12月21日
- 笑顔になってくれる人がるならアホになるのもいい - 2025年12月20日
- 春を意識した作成もありますが、寒気がきたら早めにやすみましょう - 2025年12月19日

